打上げ統括ディレクター (Nam): 打上げ予定時刻まで残り15分、最終自動カウントダウンシーケンスへの移行直前だ。先ほどテレメトリ画面で、第1段液体水素メインタンクのベントバルブ付近の背圧が、規定値の0.2メガパスカルをわずかに上回って不規則に変動しているのが検知された。極低温のマイナス253度を維持できずに水素が急激に気化・加圧されれば、機体構造の破損につながりかねない。直ちに緊急放流シーケンスを発動して打上げ中止(アボート)を宣言すべきか?
推進系主任エンジニア (Nữ): お待ちください。メインタンク自体の内圧センサーは極めて安定しており、断熱材の剥離や大規模な漏洩兆候は見られません。背圧の小刻みなスパイクは、配管内の残留水分による氷結で、パージ用ヘリウムの戻り弁が一時的にチャタリングを起こしている可能性が高いです。本日設定されている打上げウィンドウにはまだ45分の余裕があります。直ちに全面中止にするのは時期尚早です。まずはカウントダウン時計をいったんストップして『保留(ホールド)』状態に入れ、地上系配管のヘリウム加圧弁の開閉状況テレメトリを即座に確認させてください。弁の微開再加圧で氷結を吹き飛ばせれば、10分で正常シーケンスへ復帰できます。
打上げ統括ディレクター (Nam): よし、分かった。全系にカウントダウン保留(ホールド)を発令する。直ちにヘリウムパージ弁のテレメトリ診断を実施してくれ!