資源エネルギー経済学教授: 気候変動対策の議論では、『高効率なLED照明、省エネ家電、低燃費EVを普及させれば、温室効果ガスは自ずと激減する』という楽観的な技術決定論が支配的です。しかし、19世紀の経済学者ジェボンズが石炭利用の効率化において喝破したように、技術の進歩は時に真逆の結果をもたらします。これがいわゆる『ジェボンズのパラドックス』です。
資源エネルギー経済学教授: エンジンの燃費が2倍に向上したとしましょう。個々の走行に必要なガソリンは半減しますが、その結果として走行コストが劇的に下がり、人々はより遠くへ、より頻繁に車を走らせるようになります。さらに浮いたお金で別の電化製品を購入し、最終的には社会全体の総エネルギー消費量が技術革新前を上回ってしまうのです。AIやデータセンターの演算効率が向上しても、総電力消費が天文学的に膨らんでいるのも同じ力学です。省エネ技術の開発は不可欠ですが、効率化に依存するだけではリバウンド効果を十分に抑えられません。炭素税などの価格メカニズムや、排出枠のキャップ(総量規制)を制度として組み合わせることが重要です。そうしなければ、効率性の向上が総消費量の削減につながらないおそれがあります。