老化生物学教授: ハツカネズミの寿命がせいぜい2年から3年であるのに対し、同じ齧歯類であるハダカデバネズミは30年以上も生存し、しかも加齢に伴う死亡率の上昇が見られないという驚くべき特徴を持っています。特に科学者を驚嘆させてきたのは、がんの発生が非常にまれだとされる高い抵抗性です。その仕組みを説明する重要な手掛かりの一つは、彼らの皮膚細胞が分泌する細胞外基質、すなわち『ヒアルロン酸』にありました。
老化生物学教授: ヒトや通常のマウスのヒアルロン酸は分子量が数十万から百万程度ですが、ハダカデバネズミのものはその5倍以上、分子量600万を超える『超高分子量ヒアルロン酸』なのです。この長大な分子が細胞の周囲に極めて粘度の高いゲル状のバリアを形成します。細胞密度がわずかでも高まると、この高分子ヒアルロン酸がCD44受容体を介して強力なシグナルを送り、『早期接触阻止(early contact inhibition)』と呼ばれる細胞分裂の急ブレーキを過敏に作動させます。つまり、がん化の初期段階で細胞が増殖しようとしても、細胞外基質とシグナル伝達の双方を通じて異常増殖を抑制すると考えられています。この仕組みは、彼らの高いがん抵抗性に寄与する重要な要因の一つです。