労働社会学教授: 20世紀前半、経済学者ケインズは、技術革新によって生産性が飛躍的に向上すれば、今世紀には週15時間労働が実現すると予言しました。しかし現実の私たちは、コンピュータや自動化技術に囲まれながら、依然として長時間労働に追われ続けています。なぜでしょうか。その深層には、人類学者デヴィッド・グレーバーが指摘した『ブルシット・ジョブ』、すなわち、やっている本人ですら『社会に何の価値も生み出していない、明日消えても誰も困らない』と知っている無意味な仕事の爆発的増殖があります。
労働社会学教授: 組織が肥大化すると、会議のための資料作り、体裁を整えるだけの稟議書の回覧、他部署への牽制のための監視業務など、組織自体の維持を自己目的化した手続きが次々と捏造されます。皮肉なことに、清掃員や介護士など社会の存続に不可欠なエッセンシャルワーカーが低賃金で酷使される一方で、社内政治を円滑にするだけの虚飾のポストには高額な報酬が支払われるという、モラル的倒錯が起きているのです。無為な儀礼に日々を費やすことは、人間の尊厳を根底から損ないます。私たちは今こそ、『苦役としての労働時間』を美徳とする強迫観念から脱却し、仕事の価値を『他者の幸福への実質的な貢献』に照らして根本から問い直さねばならないのです。